- 21 -き巡らしたことによると口承がある」と記されており、注連指は神様をお祭りする大切な区域であったことが伺えます。 また集落の中心には「正法寺」というお寺があり、ここには天永3(1112)年の銘が残る国の重要文化財、十一面観音立像が安置されています。この観音像は、平安時代末期、武人?藤原有助が都の争乱からこの観音像を守るため、注連指へと運んできたと伝えられています。そして有助公は「女滝」の傍らに庵を結び、朝夕欠かさずに礼拝したということです。この注連指の地は、古くは神々を祭る土地であり、後には観音様への祈りが捧げられる、先人たちの信仰心と深く結びついた地域であることが分かります。 さて「女滝」「男滝」は注連指地区の南、注連指川の上流にあります。集落の道には滝への案内看板が設置されています。集落を抜けて先ず到着するのが女滝です。道の脇から階段をおりると、女滝をみることができます。近年の台風や豪雨の影響か、階段は途中で崩れてしまっており、現在は残念ながら滝壺付近まで近づくことはできませんが、およそ千年前にここで祈りを捧げていた有助公に思いを馳せて、女滝のしなやかに流れる様子を味わってみてはいかがでしょうか。 さらに山道を進むと男滝があります。地元の方の情報ですと、夏には蛭ひるが多いとのことで、訪れるのはその他の季節が良いようです。男滝までは15分ほど山道を歩きます。対とされる女滝と比べると高さがあり、流れる水の勢いもあり、清々しい音はとても心地よく、雄々しさを体で感じることが出来ます。流れてくる水はとても清らかで冷たく、火照った体を癒してくれることでしょう。山に踏み入るのは少し勇気が必要ですが、絶え間ない自然の営みを体で感じ、先人たちがこの地で育んできた信仰を追体験できるのではないでしょうか。軽い山道ですが、衣服類の準備は欠かさずに。 (清水野 佑季 SHIMIZUNO Yuki )■アクセス女滝…三重交通路線バス中川線「注連指」下車後徒歩約20分。紀勢自動車道「勢和多気IC」より約20分。男滝…女滝より徒歩約30分。車で約5分、さらに山道を徒歩約10分。■周辺の見どころ?正法寺(注連指)…国の重要文化財である木造十一面観音立像は、武人?藤原有助を願主として造られたといわれる。公開日は1月18日と9月18日の年2回。案内看板①案内看板②女滝卍正法寺注連指川38119大台町立日進小学校男滝
元のページ ../index.html#23